先日、土浦市佐野子の「佐野子のかっぱ祭り」を見てきました!
茨城県では、河童といえば牛久沼の河童が有名で、いろんな河童伝説が伝わっていますが、実はこの佐野子集落にも立派な河童伝説があるんです。
しかも単なる伝説だけじゃなくて、河童がいたという貴重な証拠も残されているんだとか?
600年以上に渡って受け継がれてきた歴史と伝説が蘇る「佐野子のかっぱ祭り」を紹介します。
土浦市佐野子
佐野子のかっぱ祭りは、毎年6月の第一土曜日に行われます。
数年前に、初めてこの幟を見たときから、ずっと気になっていましたが、なかなか都合が合わず、今年ようやく見に行けました。
しかし前日は大雨で、当日も梅雨入り間近の分厚い雲に覆われて、おどろおどろしい雰囲気でしたが、そこは河童様の気分次第ですね。
佐野子公民館前
かっぱ祭りの会場は、佐野子集落の中ほどにある、佐野子公民館前広場です。
広場では、焼きそばや焼き鳥屋等のテント市や、植木屋や野菜を販売する軽トラ市が行われていて、賑わっていました。
新川囃子 道祖組
会場のステージでは、新川囃子・道祖組の演奏による狐の舞やひょっとこ踊りが披露されて、祭りを盛り上げています。
新川囃子は地元土浦のお囃子団体で、土浦のキララ祭りや真鍋の夏祭りで、お囃子を披露しています。
佐野子かっぱ祭りは、2011年からして始まった新しい祭りのため、地元周辺でもあまり知られていません。
よくある地域活性化のゆるキャライベント?と思ったら大間違いです。ここは600年の歴史と文化が眠る隠れた伝説の地なんです。
土浦市桜川
佐野子集落は、土浦市の中央を流れる桜川のすぐ右岸にあります。
現在は河川改修で堤防が造られましたが、この桜川と佐野子集落には、代々伝えられた河童伝説があります。
<佐野子の河童伝説>
今から650年ほど前の室町時代、桜川にいたずら好きの河童が住んでいました。
ある日、相撲の強い若者が川で馬を洗っていると、馬の尻尾をつかんで川に引きずり込もうとする河童を見つけました。
若者は怪力で河童を生け捕りにすると、縄でぐるぐる巻きにして村に連れ帰りました。
<享和元年水戸藩東浜で捕まったとされる河童>ウィキペディアより
河童を連れ帰ると、村人達は人や馬を川に引きずり込まれた恨みから、河童を殺してしまおうと騒ぎ出しました。
そこに満蔵寺の妙沢上人があらわれ「二度と悪さをしないと約束させるから、命だけは助けてもらえないか」と村人を説得しました。
そこで村人達は、いたずらが出来ないように河童の右手を切り取って放してやりました。
それからというもの、この辺りでは、川で溺れる者はいなくなったそうです。
そして、この時切り取った河童の手は今も満蔵寺に大切に保管されています。
佐野子満蔵寺
佐野子集落の満蔵寺は、1013年創建の由緒のある立派なお寺であったそうですが、江戸後期頃から住職のいない無住寺院となっていたそうです。
昭和の始めに本堂は火災で消滅してしまいましたが、幸いに御本尊と河童の手は住民の手によって運び出され、災難を免れたといいます。桜川の河川改修によって寺地も無くなり、現在は佐野子公民館に大切に安置されています。
かっぱ堂
河童の手は「むやみに出すと大雨洪水になる」と伝えられたため門外不出となり、漆塗りの箱に納めて非公開のまま大切に保管されてきました。
しかしテレビで「河童の手のミイラ」が紹介されたり、茨城県歴史博物館で陳列されたりしたことから、2010年に「かっぱ堂」を建立し、2011年から「佐野子のかっぱ祭り」を開催するようになりました。
そして佐野子公民館で、妙沢上人と河童の供養法要を行うと共に、年に一度「河童の手のミイラ」を一般公開しています。
これが河童の手のミイラです!
細長い5本の指が伸びていて、指の間には水かきらしき皮があります。
指の第一関節が逆関節になっていて、とても不可思議な造形です。
以前に、上野動物園の園長さんに鑑定してもらったところ、人間の手でも猿の手でも無い、他のどの生物とも違う…と言われたそうです。
「河童の手のミイラ」は、生物学上の貴重な標本であり、人類史上の貴重な遺物でもあり、さらに集落の秘宝でもあるため、これ以上アップでお見せすることができません!
どうしても見たい方は「河童大明神様、御開帳賜ります~♪」と唱えてから、
[ここ]をクリックしてください。ただし河童の祟りにあっても保証はいたしません!
水神橋
河童は、日本の妖怪とか伝説上の動物と云われますが、水神またはその仮の姿だとも伝えられています。
佐野子集落のすぐ脇、桜川に掛かる橋の名前は「すいじんばし」とあり、かっぱ祭りの期間中だけ「かっぱばし」という看板が立てられます。
水神=河童ということで、この橋の名前も河童伝説が由来となっているようです。
また、佐野子集落には昭和の始め頃まで「カピタリ餅」という風習が残っていたそうです。
「カピタリ餅」とは、元旦に「餡ころ餅」を藁に包んで桜川に投げ込み、水難除け(河童除け)を祈る行事だそうです。
同じような行事は、牛久沼・利根川・潮来にもあったそうですが、今は消滅したようです。
大五輪塔<土浦市指定文化財>
また、佐野子集落から300mほど離れた共同墓地には、室町中期に建立されたという五輪塔があります。これは河童を助けた満蔵寺の妙沢上人の墓碑であると言い伝えられています。
約650年前の墓碑が、いまも身近な風景の中に人知れず建っているなんて、とても興味深いものです。
河童伝説は日本中にありますが、この佐野子集落の河童伝説は単なる言い伝えだけじゃなく、伝説を裏付ける遺跡や遺物などの証拠が残されています。
近年の河川改修と堤防などによって川の氾濫や水害も減り、河童も昔のように悪事をする悪い妖怪のイメージから、河川や湖沼のキャラクターとなって人々から愛されています。
この佐野子集落でも、水難事故が無いのは河童のおかげ!と、地域の守り神として河童伝説を大切にしています。
小さな集落に伝えられた、650年前の河童伝説と地域の守り神として大切に保存されてきた貴重な遺物「河童の手のミイラ」を末永く守り伝承してほしいものです。
さて、あなたは河童を信じますか?
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土浦市・佐野子のかっぱ祭り!
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